廃盤 チェリビダッケ&ロンドン交響楽団 1978-1982(11CD) コレクション

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冒頭の『運命の力』序曲からしてその表現のワイドレンジなことには驚くほかありません。『ロメオとジュリエット』の「タイボルトの死」におけるめくるめくスピード感と死の恐怖もなんとも凄まじく、一方、ミケランジェリとのラヴェル第2楽章では繊細さの極限を示した耽美的な演奏を聴かせてくれるのです。 中でも凄いのは『魔法使いの弟子』でしょう。冒頭から遅いテンポ設定に少なからず驚かされますが、そこで克明に印される細部音型のおもしろさ、細心の注意を払いつつ取り出されるニュアンスの豊かさは、まさしくこの指揮者ならではの表現。通俗的な描写音楽とみなされがちなこの作品の概念をはるかに上回る多種多様な情報量とデリケートな美的感覚は圧巻で、音楽が高潮するにしたがって無制限とも思えるほどにふくれ上がり、空前といいたくなる巨大なスケールに達するあたりはもはや絶句するほかありません。会場のナチュラルな響きを収めた良好な音質もてつだって、他のどんな演奏からもまず絶対に聴くことができないであろう素晴らしくユニークな名演を堪能することができます。 ラヴェルのピアノ協奏曲も絶品です。相性がよかったミケランジェリとチェリとのコンビは来日公演などでもよく知られるところ。共演者の選択には極端なほど厳しかったことで有名なこのふたり、おたがいに孤高と称された唯美主義者どうしの共演は、ここでも他の組み合わせからは想像できないユニークな美的境地を達成しています。とりわけ第2楽章は、両者の“音”に対する鋭敏なセンスを如実に感じさせるみごとな演奏で、細部まで目の行き届いたオーケストラのコントロールぶりをみせるチェリの伴奏、極度にクリアで、しかし脆弱さを感じさせないミケランジェリの端然とした音色が一体となった、きわめてデリケートな感覚美がたまりません。 プロコフィエフの交響曲第5番も聴きものです。終楽章は、指揮者の技量とオーケストラの性能を示す絶好の場であるだけにさまざまな熱演、力演がありますが、そんな場所でもチェリビダッケは豊富なニュアンス表出を怠りません。いちどその多彩をきわめた演奏の味を知ってしまうと、他の演奏はいかにも無味乾燥もしくは品のない空騒ぎに聴こえてしまうほど。ロンドン響の大奮闘ぶりもみごとなもので、特にクラリネット・ソロの巧さは聴きどころです。

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